YUNOHIRA ART SIGHT × 金子善明
語り手 ディレクター 渡邉 まさみ
当プロジェクトで特筆したい作家がいる。
作品・作家の枠ではなく、このプロジェクトを興す由縁となった人物なので、ここで紹介させていただく。
それが湯平出身の画家・美術家の金子善明(かねこよしあき)。昨年70余年の幕を降ろした湯平の名産みやげ屋、金子商店の長男として生まれ、抽象画入門の本の執筆をはじめ、武蔵野美術大学での講師、パリへの渡仏・留学経験など、人生をかけて精力的に芸術と向き合い作品を残してきた人物だ。彼の存在無くしては、きっとこのプロジェクトは成し得なかっただろう。そして、彼の作品を見た時の心が震えた感覚こそ、私が今日までやってこれた原動力だったとも言える。
故郷としての湯平と作家の結びつきを見つめる
湯平という独特の空間性。匂い・温度・湿度、、五感で染み付いている何か。それを思うと、たとえ遠く離れても、故郷というものが作家に与える無意識化での影響は大きいのではないかという思いが湧いてくる。そんな私の思いをグッと頷かせてくれたのが、金子善明作品だった。作風が好きなのももちろんあるが、その作品を見つめていくうちに私はいつしか彼の作品から湯平を感じ、湯平から彼の作品を感じるようになっていた。
「作品と風景」これらが相互に作用して、私はこの地を見つめる新しい魅力を発見したような感触だった。そしてこの感覚を糸口に、私はディレクターとして当アートプロジェクトの核となる作品を、この地と金子善明作品との結びつきを見つめ新しく繋ぎ合わせていくことを目的とした「まち規模の大コラージュ作品」とすることにした。
残念ながら、数年前にこのアートプロジェクトの草案をメールで伝えた時「ぜひ自分に出来ることがあれば」と言ってくださった金子善明さんは2021年に他界。会うことの叶わなかった悔しさも握りしめ、その後も彼の親族との協議を重ね、作品使用などを全面的に承認いただき、この記憶と風景と人物をつなぐ壮大な作品づくりは始まった。
一度も会えなかったけれど、今私は金子善明さんの背中と一緒に湯平を見つめ、作品を作っているような気持ちでいる。
KANEKO Yoshiaki Profile
無所属
1948 大分県生まれ
1972 武蔵野美術大学専攻科油絵終了
1974~82 パリ滞在
1975 エコール·デ·ボザール(パリ国立美術大学)入学
2002.4~2018.3
武蔵野美術大学造形学部通信教育課程非常勤講師
著書
〈新装版〉
「抽象画入門」えにし書房
個展
1972.·82·83 OBS 美術サロン
1979 Galerie Peinture Fraiche(パリ)
1980 地球堂ギャラリー(東京)
1981 Galerie L’Orangerie(ベルギーオステンド)
1982·91 夢土画廊(東京)
1984 高宮画廊(大阪)
1988 由布院空想の森美術館
1991·92·95 ギャラリーフォルテ(東京)
1993 近代画廊(大分)
1994 工房親(東京)
1995·96·98·13 ギャラリー喜多(奈良)
1995 ガレリー·ヴォワイヤン(静岡)
1995 松濤ギャラリー(東京)
1996·97·98·00 ギャラリー·一穂堂(東京)
1996·12 湯布院アートホール(大分)
1996 ギャラリー今井(奈良)
1997 ABCギャラリー(大阪)
1999 千種画廊(東京)
1999 ギャラリーアンダンテ(アートフェスタinおおさか)
2000·01 志摩画廊(京都)
2001 ギャラリーアンダンテ(神戸)
2001·05·08·11 ギャラリーサーカスサーカス(神戸)
2002·04 福住画廊(大阪)
2014·16·18·20 ギャラリーCreate洛(京都)
2015·20 ギャラリー島田(神戸)
2016·18 ART PRO GALA(福岡)
2018 日本画廊
2019 天野画廊(大阪)
2020·21 中和ギャラリー(東京)
2021 ギャラリー旦&麻(佐渡)
他多数
1975·76·78·79 Salon d'Automne(パリ)
1976·77·78·79 Le Salon (1978より会員)(パリ)
1977.79 Socie'te' Nationale Beaux-Arts(パリ)
2017 奈良県宇陀市の芸祭でのパフォーマンス映 像がドイツ·ハンブルクの映画祭でWorld Media Festivalで銀賞受賞
1970·71 地球堂ギャラリー(東京)
1973 夢土画廊(東京)
1978 LA MANDRAGORE INTERNATIONALE GALERIE D'ART(パリ)
1979 Galleria d'Arte STUDIO 80(イタリアBocad:Magra)
1990·96 湯布院空想の森美術館(大分)
1992 作家会議交際交流展(韓国·ソウル·プサン)
1994 ギャラリータントン親子四代展(奈良)
1995 わたくし美術館(大分)
1995 ギャラリー上方銀座(大阪)
1996 ギャラリー喜多(奈良)
1996 工房「親」
1996 ギャラリー·一穂堂(東京)
1996 オンワードギャラリー(東京)
1998 ギャラリーにしはし(大阪)
2001 比良美術館(滋賀)
2003 洋協アートオールJADA展
「画家の眼·通商の目」(東京)
2014 ギャラリーCreate洛親子二人展(京都)
2015 直方美術館(直方)
2019 ギャラリーブロッケン親子二人展(東京)
他多数